JAS-39 GRIPEN

 まず最初に……性能諸元等に関する公式情報はオフィシャルホームページをご覧ください(http://www.gripen.com/)。細かな数値に関しては、参考資料によって微妙に異なるのでここでは割愛さてせいただきます。
  世界でもユニークな中立政策をとるスウェーデンが開発した最新鋭戦闘機が、このJAS39グリペンです。設計思想の最大の特徴は、最新の技術を用いて最強の戦闘機を作るのではなく、新たな技術で安価に維持・運用できる戦闘機を求めた点でしょう。戦闘機としては例外的なことに整備性に優れており、戦時には一人の職業軍人と簡単な訓練を受けた予備役兵五人で整備可能だと言われています(対して、条件は異なりますが米空母では68機の作戦機に二千五百人あまりの航空要員が必要です)。ターンアラウンドも短く、人力でミサイルを装着できたり、エンジン始動中にも燃料補給が可能など実用性を最優先にした設計になっています。パイロットを支援するための機能も豊富で自動着陸機能等も備えており、訓練時間を短縮することによりパイロットにかかるコストも抑えています。
  もう一つの特徴はその極端なSTOL性能で、特別な補強をおこなわない700mの直線道路で離着陸が可能です。スウェーデン空軍はベース90と呼ばれる基地分散システムを用いており、戦時には高速道路を利用し広大な国土にグリペンを分散配備し、空襲による被害を避ける運用をおこないます。
  また、スウェーデンは戦闘機の多用途化をもっとも最初にはじめた国の一つであり、グリペンはその集大成であるともいえます。JASは日本エアシステムの略では無論なく、戦闘(Jagt)、攻撃(Attack)、偵察(Spaning)のそれぞれスウェーデン語の頭文字をあわせたものです。小型で軽量(F-15やF-18の半分以下、F-2相手でも2/3)、だけど何でも出来る小粒でもピリリと辛い戦闘機、がグリペンです。

 ゲーム中に登場するグリペンは、現行のJAS39C/Dからさらに輸出用に改良された機体という設定になっています(ゲーム内容には直接関係ありません(笑)。なお商業的には失敗したビゲンと異なり、現実のグリペンのセールスは予想以上に好調のようです)。具体的にはエンジンをRM12(F-404-GE-400のボルボ版)からF-414-GE-400(スーパーホーネット用エンジン)に換装、コクピットのCRTも液晶に変更されています。戦術データリンクも空自用のものです。また複座型は固定武装が無い為機関砲ポッドを搭載する必要があるのですが、正規品の入手に失敗しビゲン用のエリコンKCA30o機関砲パックの横流し品を入手して搭載しています(高性能ですが重くて嵩張りすぎたため不遇に終わったリボルバーカノンです)。
  なお、複合素材を用いている為、未塗装状態では実際は黄緑色なのですが、ゲーム中ではジェラルミン色という設定です(苦笑)。許してください。

 しかし、いいところづくめのように見えるグリペンですが、私的には戦闘機としての最大の問題点もその小型軽量の機体にあるように思えます。F-16がその単発機として宿命的な冗長性のなさ故にそろそろ限界を迎えようという今日、一度はけ落とされお情けで生産されたF-18(YF-17)が新たにスーパーホーネットとして大規模に米海軍に採用される未来をあの頃誰が予測可能だったでしょうか。
  現状でもフェイズドアレイレーダーを搭載するのが苦しいレドームに、旧態然としたエアインテーク。翼面加重の極端な軽さにのみ頼った機動性は確かに手堅い設計ではありますが、ビゲンの頃のような先進性はもはや感じられません(YF-22とYF-23、X-32とX-35のように、手堅い設計思想を優先するのはスウェーデン空軍だけではありませんから、非難はしませんが)。双発は無理にしてももう少しだけ機体を大型化して、改良発展の余地を残すという考えはあり得なかったのでしょうか。数十年後、グリペンの改良が難しくなった時、次世代の戦闘機を新たに開発する余裕がその頃スウェーデンにあるのか、もしくはJSFに加わりグリペンが最後の独自戦闘機となるのか、大変興味深いものです。

 もっとも、対戦車戦術の進歩により陸の王様の地位を追われた戦車のように、レーダーと対空ミサイルの発展により戦闘機の地位が単なるミサイルキャリアーへと低下しようとしているのもまた事実です。80年代初頭にこの現状を予想して機能を抑えた安価なグリペンを設計をしたのだとしたら、別の意味でスウェーデン空軍恐るべし、という気はします。
  なにより、東京都の約3/4しか人の居ない国家が、独力で開発した戦闘機というのはやはり称賛すべきものでしょう。その十倍以上の人口をもってしても、日本は戦闘機を独自開発できずに居るのですから。

 文責・早狩武志

 
     

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