微妙に異なる歴史を歩んできた近未来の架空日本。 主人公の父親、萩野憲二は政治・経済的に閉塞感漂う中、新時代の社会モデルとして、日本を政治的には分割し、経済的には逆に極東アジア全体を統合する『円経済圏構想』を提唱する。
折からの地方分権熱と、変革に伴う経済効果を期待する勢力にも押され、議論のすえこの提案は受け入れられる。ほどなく各地域に広域行政府が発足。
日本は順調に新時代にふさわしい社会システムに移行し得たかに見えた。
だが、新制度発足後間もなく、関東圏行政府は突然、これは旧来と同様の国家単位だとして独立を宣言する(直前に、萩野憲二は暗殺される)。
あくまで、政治システムの分割に過ぎないと考えていた他地域は、激しくこれに反発した。 関東の独立は、経済利益を目的とした一部政財界の私欲に満ちたものだったからである。 利己的な独立を許すくらいなら、旧日本を維持すべきと関西・西日本を中心に指揮された機動隊・一部自衛隊が関東に進出。独立を阻止しようと、強権的な統治を開始する。
これに対し、自由を制約された学生が反発。予備生徒制度を発足させ、レジスタンス運動を開始する。東アジア団結を夢想する活動家の扇動、EU型大規模経済圏の成立を望む欧州の密かな軍事支援などもあり、その組織は急速に拡大した。
主に学校単位で編成された予備生徒はやがて、武装蜂起して第一次独立闘争を開始する。内戦への備えのなかった関西系自衛隊勢力は不意をつかれ敗走。 関東は独立状態を回復する。
同時にアメリカ・ロシアを主とした国連軍が介入。富士川・糸魚川を中心に中立地帯が成立する。
……そのまま、戦況が膠着状態に陥って数年。戦闘は越境しゲリラ活動を行う一部のレンジャーと、停戦監視団の目を盗んで示威行為を行う双方戦闘機の間で交わされるのみになっていた。
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