は、悪い女になりたい。

小さいころから、大抵のことは人並み以上に出来てしまって、だから周りに期待されて、あとはそれに応えることの繰り返しで……
決して嫌なものじゃなかったけれど、なんだか自分が機械になっていくような気がしたわ。
言われたこと、求められたことを完璧にこなすだけのロボットに。
それで、本当の私は存在するの? ……なんて、我ながら青いことを考えるようになったのは、いったい何時ごろからだったろう。
気付けば、私は彼の虜になっていた。
私と同じ……ううん、きっと私以上に隙がない万能タイプの人間なのに、どう見ても好き勝手に生きてるとしか見えないあいつ。
あいつはどこで、殻を破ることができたんだろう。
あいつはどこで、自分らしさを見つけたんだろう。
いやそもそも、あいつは最初からああだっただけかもしれない。
それとも私が知らないだけで、あいつも苦しんでいるんだろうか。

そう思うようになって以来、私の頭からあいつの存在が離れない。
悔しいじゃない、そういうの。
自分が意外に負けず嫌いだって気付いたのは、収穫といえば収穫だけど、それだけじゃあ満足できない。
あいつを知って、裸にしたい。そのためならなんでもする。あいつを負かして、悔しがらせてやりたいから。
私は、悪い女になりたいの。

……でも、才能ないのかな。
あいつの傍にいて、あいつの真似をして、あいつを読もうとしているけれど、いつまで経っても見えてこない。裸にされるのは、私ばかり。
本当に、馬鹿みたい。
最近じゃあ、あいつと仲のいい男の子にまで嫉妬してるし。
もしも私が、その子を誘惑したりしたら、あいつはどんな反応をするんだろう。

そんなことを、いま私は考えている。


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