のテスト、カンニングさせてくれたら
処女あげるよ!

って、放課後の教室でそう言われた。

僕、来栖樹は、それまで女の子から相手にされたことなかったし、当然彼女なんてものもいなかったから、そのときは混乱しちゃって、随分間抜けなリアクションをしたと思う。
ああ、一之瀬っていうんだけどね。僕にそんなことを言ったのは。
彼女は、はっきりいって有名人。
城戸っていう僕の友達――というか向うはただのオモチャ扱いしてるだけかも――がいるんだけど、一之瀬は城戸と同じレベルで顔と名前が知れている。
悪い意味でね。
聞いた話じゃ、五千円で売春やってるとか、そういう噂がある子だよ。
僕としては、別に一之瀬がクスリやってようとウリやってようと関係ないと思っていた。
だって、接点なかったし。別世界の人種だと思ってたから。
でも、カンニングさせてくれって頼まれて、処女あげるって誘われて……情けないことにグラっときちゃった。
噂が本当なら、一之瀬が処女なわけないんだけどね。
からかってるのか、って思ったよ。
でも、初めて話した一之瀬の印象は、噂とだいぶ違うように思えたんだ。
だから、かな。偏見みたいな目で彼女を見ていたっていうことに、少なからず負い目もあって、カンニングを手伝う気になったのは。
処女云々の話はどうせ冗談だと思ってたから、あまり意識してなかったけどね。

でも。
でも、一之瀬は本当に……






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