「ライ麦畑でつかまえて」

 
   
「歌だ……」
「ええ、歌よ。夕やけの畑の中にはね、いろんな歌が埋まっているの。あたし、ほかにもいろんな歌を知ってるわ」

 そう言って、その子――R-タンポポは僕のしらない歌をうたった。

「ずいずい ずっころばーし ごーまみそずい……。ちゃつぼに はまって とっぴんしゃん……」

   ずいずい ずっころばし ごまみそ ずい
   ちゃつぼに おわれて とっぴんしゃん
   ぬけたら どんどこしょ
   たわらの ねずみが こめくって ちゅう

「いい歌だね。それ、どういう歌なの?」
「さあ。でも、きっと恋の歌よ。人間{マンカインド}というのは恋の歌が大好きなものらしいもの」