「Daisy Bell」

 
   
「でいじー…でいじー…………はなよめみたいに……」
 ヒナは、ちいさな声で歌ってた。
 原っぱの中で、花が咲いてるあたりにすわって。手には、ちかくに咲いてた花をつまんで。
  それは、ちいさな、まるい、白い花……。

 デイジー デイジー はいといってよ
  気がちがうくらい君が好き
  ちゃんと立派な花嫁みたいに
  馬車のパレードは無理だけど
  でも かわりにきっと素敵
  君と 自転車二人乗り

「きみと……じてんしゃ…ふたりのり……」

 ヒナは、ただ、ずうっと歌いつづけていた。うたたねしてるみたいに、空をぼうっと見上げながら――。
 僕は、その様子をただただ、だまって眺めていた。