「“黒”」

 
   
「真実!? 真実って、なにさ!?」
「市民イチヒコ、貴方が心から望むなら、私はそれをあげましょう。
  貴方が欲しがるものは全てあげると、私は決めているのですから」

「見えてるものが、ぜんぶじゃないの?」
「貴方が望むなら、見えてるものを“ぜんぶ”にしましょう。
  でも貴方が望むなら、見えないものも“ぜんぶ”にします。《世界》は、貴方のためにあるのですから」
「それって、どういうこと? もう、いっしょじゃないってこと?」

 おんなじものでも“見かた”がちがうと、ぜんぜんちがう。
  たったひとつ真実を知っただけで、《世界》はぜんぶ変わってしまう。
  そういうこともあるのよ――と、みず姉はこわい顔で言っていた。

「イチヒコさん、しあわせにおなりなさい……」