相州戦神館學園 八命陣

物語

昨夜見た夢の続きを今夜見て、その続きを明晩見る。
情景は鮮明。それが夢であることを常に理解し、かつ起きた後も忘れない。
つまり、連続した明晰夢。たとえ身体は眠っていても、心は片時も止まっていない。

幼い頃から毎夜そうした夢を見続けてきた柊四四八は、通常なら人生の三分の一を要する休眠を、
精神的な面ではしていないも同然だった。
ゆえに心配される疲労も、不健康も、なぜか彼には一切無い。
むしろ覚醒が途切れないことで気持ちは同世代の友人たちより数年先行しており、
能力も高い秀才としてさえ通っていた。
異常体質と言えば異常体質。
だが実際に問題は起きてないので四四八はこれを己の長所と解釈しており、
それ以外はごく普通の学生として日々の生活を送っていた。

しかし、そうした自分と同じ特徴を持つ初めての相手――
世良水希に出会ったことで四四八の人生は一変する。
彼の友人たちも夢の世界に入ることが可能となり、
当初は不思議に思いつつも楽しんでいた面々だったが、
ある日を境に自分たちが巨大な歯車に絡め取られたのを自覚した。

この夢は人を殺す。
この夢は歴史を変える。
この夢は、一度足を踏み入れた者を絶対に逃がさない。

生涯不眠を貫くことなど不可能である以上、死の夢は夜毎四四八たちを招き入れる。
ゆえに、そこから脱する方法は二つだけ。
今すぐ自ら命を絶つか、どこまでも突き進んで悪夢の謎を解き明かすか。

否応のない二択であり、戦わなくてはならない動機もあった。
そして何より、四四八たちは皆が等しく思っていたのだ。

これほど理不尽で不可解な状況なのに、なぜか巻き込まれたという気がまったく起きない。

まるで、こうなることこそ皆の総意……
自ら選んだ願いなのだというかのように。

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