縛血者 【ばくけつしゃ/ブラインド】

縛血者側から見た人類は、複雑な感情と共に共存する「隣人」である。
餌食や獲物としての優越感や嗜虐心。相容れぬ敵対者としての警戒心。失った故郷やもう一つの人生を思い出させる愛惜の対象など、その総てが混交している。

そのせいか、縛血者は自身が共棲者である事を自覚し、羊の群れの中で、羊の皮を被った狼で居続ける事の大切さを理解している。歴史から、あるいは体験から学んでいるのである。
単独の強者は、所詮単独。己らの強みは闇に紛れているからこそであり、自ら姿を曝せば大多数に囲まれ滅ぼされるしかない事を知っている。また、恐怖をきっかけに爆発した人類の集団狂気が、時としてどれ程の暴走を見せるのかも知っている。

ならば数を増やして人類を逆に隷属させればいいのだが、それは数を増やしにくい種族特性から限界があった。さらに日常の生活水準など、人類社会の恩恵に預かっている部分も大きいために現状維持こそが望ましいと考えている。
故に、今日も縛血者は隠れ潜む。
隠れ潜んだまま、人類の血を吸うことで朧な生を営んでいるのである。