Cosmology

刻鋼式心装永久機関

 科学の夢であり、到達点とも言うべき永久機関、その一種。
 その名が示す通り、通常考えられている永久機関には見られない幾つかの差異が存在し、それは以下の通り。

 「人体へ組み込まなければ、如何なる手段を用いても起動しない」
「設計図による複製は可能だが、構造の分析は不可能」
「同次元上、同時に四十七基以上は存在できず、四十八基目を組み上げようとした瞬間、即座に動作不良ないし自壊が発生する」

 という、奇妙な特性を幾つも有している不可思議な失伝技術品(オーパーツ)。
何故か時計機構の創設から既に存在していたらしく、誰一人その製造に対する完全な理解には至らないながらも、
製造法だけは存在しているため破壊されれば造り出せるという非常に謎の多い動力機関。
そして未だ誰も、その完全な解明には至っていないのが現状である。

 通常、科学というものは理解と転用により多岐に渡って開拓したテクノロジーの恩恵を与えていくものだが、心装永久機関にはそのような理屈が一切通じない。
ある意味科学の中でも完全に孤立した技術であるが、未だ封印も淘汰もされていないのは、偏にこれこそがこの世に現存する唯一の永久機関であるからに他ならない。

 なお、心装永久機関の移植に必要な検体側の条件は総じて三つ。
種類を問わず死亡寸前に強烈な感情を抱くこと。心臓と脳髄が原型を保っている状態であること。死亡後の場合、心臓内に残留している血液が完全に凝固しきるまでに移植すること……が挙げられる。

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