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 よっぽど動揺したのか、紗久良先輩は持っていた本まで取り落としてしまった。

 つい、本の表紙に目が行く。

 ……ん?

 まず、目を疑った。

 瞬きして、もう一度目の焦点を、本の題名へと合わせる。

 うん──間違いないよな。

 『男の子をオトす100の方法』?

紗久良「きゃあぁあああ!」

 てっきり難しい学術書だろうと思っていたのに、紗久良先輩でも、こんな本読んだりするんだ。

紗久良「えいっ」

 俺に本のタイトルを見られていることに気付いたのか、紗久良先輩はこっちへ視線を向けたまま、慌てて本の表紙を、身を乗り出して隠した。

 両手と、あとボリュームのある胸が、本を隠す。

 けど──

紗久良「うふふ。ごきっ、ごきげんよう……九十九、くん」

九十九「あ、いや、そのー……」

 言ってあげるべきだろうか。

 『今更遅いですよ』、とか、『あの、肝心な題名が隠れてませんよ』、とか。

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