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クラウディア | ……あのですね |
クラウディア | ヴィルヘルムは神の存在を信じていますか? |
ヴィルヘルム | はぁん? |
また益体もないこと。訊く相手を盛大に間違ってるとしか思えない。
ヴィルヘルム | 藪から棒に、なんだそりゃあ。信じてるわけがねえだろう |
クラウディア | ですか。ならばそれは、いったいどうして? |
ヴィルヘルム | 簡単なことだ。そんなもんがもしもいるなら、戦争なんか起きるはずねえ。俺みたいなもんが生まれるはずねえ |
ヴィルヘルム | てめえらの言う神って奴は、愛とやらに溢れてるんだろう。すべてを創り、導く全能の主なんだろう |
ヴィルヘルム | だったらなんで、世界はこんなことになっている? 理屈がまったく通らないぜ。餓鬼でも分かる矛盾点だ |
クラウディア | なるほど。よく聞く類の主張ですね |
だけどこいつは、優しくあやすような態度を取るので癪に障った。こっちはもともと、他人から偉そうにされるのが嫌いだしよ。
ヴィルヘルム | てめえ、何が言いたいんだ |
クラウディア | いえ……ただ、神とはそういうものですよ。聖書の中でも、かなりの人々を死なせています |
クラウディア | つまりこんなことになっているのが、神の創り給うた世界なのです |
ヴィルヘルム | はッ、だったらただのクソ野郎じゃねえか |
サドで、屑で、サイコなイカレてる変態だ。俺が言う筋でもガラでもないのは承知してるが、所業と信徒のイメージが乖離しているのは確かだろう。
ゆえにおまえら狂ってる。そう言ってやったんだがよ。
クラウディア | 人を死なせることがクソ野郎、ですか。だったらあなたの奉ずるラインハルト・ハイドリヒ様はどうなのでしょう |
クラウディア | まだお会いしていませんから、実際のところは分かりません。だけどあなた方のお話を聞く限り、彼もそういうものではないのですか? |
クラウディア | すべてを愛し、ゆえに壊す。あなたが言うところの、実に堂々たるクソ野郎ですね |
ヴィルヘルム | てめえ……! |
キレかけ、同時に腰を上げかけ――だが一番激怒したのは、咄嗟に反論できない自分自身にだと気がついた。
クラウディアはそんな俺を制すように、すみませんと言って首を振る。
クラウディア | 意地の悪い言い方になりましたが、あなた方に文句をつけたいわけではありません。その目的も、具体的には知りませんし |
クラウディア | だけど、目指しているものは漠然と理解できます。それは私も、他の人々もきっと同じ |
クラウディア | 善き処に行きたい。そうなのでしょう? |
善き処。ヴァルハラ、天国、祝福、幸せ……
俺たちの魂は、皆そこへ辿り着くことを願っている。
個人ごと、それぞれの価値観によって形に違いがあろうとも、概念としては同じであるとクラウディアは言っていた。
クラウディア | その場所で、我々を待っていてくださるのが父なる神 |
クラウディア | 私はそう思っています。そして、だからこそ我々は、そこへ至れるように道を選び、歩まねばならない |
クラウディア | あなたがラインハルト・ハイドリヒ様を敬するように、私も私の光を敬い歩むのです |
クラウディア | ですから―― |
そこで一旦言葉を区切り、背中しか見えないが笑っているのが分かる調子で、こいつは話に結びをつけた。
クラウディア | もう少し、あなたは信心深くならないといけませんよ |