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邯鄲ノ夢

夢界においては、明晰夢の特性としてイメージの力が現実では有り得ない超常能力を発現させる。邯鄲とはそれを操る技術のことで、大別すると五種、細分化して十種の夢に分類される。その得手不得手によって人物ごとの個性が出るが、これらはあくまで基礎技能にすぎないため、誰でも十種(一つは例外だが)の夢を使用可能。
邯鄲の真髄とは、その中から特定の夢を選び、複数組み合わせて独自の力を生み出すという創造性――すなわち夢見る強さを問うものである。
そして当然、これは夢界限定の力であるため、現実では使えない。



戟法(げきほう)
身体能力を強化する夢で、パワー型の"剛"(ごう)とスピード型の"迅"(じん)の二つに分かれる。
自らの運動神経や筋力という、もっとも馴染みの深い感覚に干渉する力のため、現実でのスペックと比例しやすい。つまり、運動音痴な者がアクロバティックなアクションをイメージして実行するのは、たとえ夢でも難しいということ。ゆえに戟法を得手とする者は、現実でも高い身体能力を有していることが多い。
なおこのように、基本となる五種の夢はどれも二つのタイプに分けられているが、それは片方が必ず不得手だというわけではない。剛を得手する者でも、熟練していれば並の迅タイプより動きは速いと思っていい。が、稀にどちらかへ偏重した特化型も存在するし、どちらも極めている者も存在する。

楯法(じゅんほう)
体力、スタミナや耐久性を強化する夢で、防御型の"堅"(けん)と回復型の"活"(かつ)の二つに分かれる。
前者は硬いという意味であり、後者は負傷や疲労に対する治癒能力が高いということ。戦闘において戟法と並ぶ必須技能だが、この夢は扱いが難しい。それはひとえに、死や痛みの恐怖に弱い高等生物の必然であり、致死レベルの負荷を耐えたり癒したりというイメージが非常に困難だからである。
そのため楯法の達者は、精神面で非常に強いか生物としてどこか壊れているかのどちらか――あるいは両方と言える。

咒法(じゅほう)
イメージを放つ夢で、矢のように飛ばす"射"(しゃ)と爆発のように広げる"散"(さん)の二つに分かれる。
どちらにせよ間合いを伸ばすという、言わば魔法のような飛び道具のため、他技能と組み合わせた際の有効度は折り紙つき。たとえば他者を癒すといった真似は、楯法と咒法を組み合わせなければ実現できない。
言うまでもなく高資質であるほどより遠くに、より速く、より強い力のまま飛ばすことが出来るので、咒法の達者は攻・防・補助のあらゆる面で重要な存在。

解法(かいほう)
他者の力や感覚、場の状況等を解析・解体する夢で、すり抜ける"透"(とう)と破壊する"崩"(ほう)の二つに分かれる。
前者は防なら回避、攻なら斬撃に有利。後者は防ならカウンター、攻なら打撃に適している。以上のことから、解放の達者は攻防力に有利な補正が働く他、敵の力量や技の正体を見抜くことが可能。そして逆に、自らの戦力を偽装・隠蔽することができる。
なお、夢界から出る――眠りから目を覚ますという行為には解法の資質が重要。
基本的に戦闘中などの状態では相手の妨害もあるため逃走は困難だが、高レベルの者ならば絶体絶命の窮地から脱出することも不可能ではない。

創法(そうほう)
イメージを具現化する夢で、物質の創造や操作を成す"形"(ぎょう)と、環境の創造や操作を成す"界"(かい)の二つに分かれる。
前者は武器や防具といった物質を具現化し、後者は天候や季節、その他特殊な状況を具現化する。ただし界は一種の上位スキルなので、その資質を有する者の、さらに一握りが後天的に化けることで初めて使用可能になる。つまり、最初は誰でも形に限定。
無論のことイメージが明確で愛着のある物ほど具現化した際の精度は高いが、これは必ずしもプラスにならない。たとえば銃を具現する際、その構造や仕組みを知りすぎていると、現実的な性能限界を設定してしまうため、超常の力を持った魔銃のようなものは創れない。大事なのは適度に夢を持つということで、まさに夢界を象徴するような力と言える。