あおい 「……なんだか不思議ね」

宙斗 「なにがだ?」

あおい 「あたしの方がパニクってたはずなのに、焦ってる宙斗を見てたら落ち着かなきゃって思ったの」

宙斗 「……同感だな。俺もだったよ」

あおい 「そうなんだ」

宙斗 「お互いの気持ちを合わせるのって難しいもんだ」

あおい 「……そうね。いつもこうやって同じペースで合えばいいのに」

宙斗 「あおい?」

あおい 「そ、そしたらもっと早く……、今ごろはもう……あたしたち」

宙斗 「…………」

あおい 「……ああ! な、なんでもない」

あおい 「今日のあたしどうかしてる! こんな風に弱気になるなんて……!」

あおい 「こんなうじうじしてるあたしのこと、宙斗は幻滅しちゃうわよね」

そんな自信のない女の子みたいなことを言うあおいなんて滅多に見られない。
いやきっと初めて見るあおいだった。
だから俺はなるべく男らしく――ちょっとだけキザな言い回しで言ってみた。

宙斗 「いいじゃないか。同じペースで歩けなくったって」

あおい 「宙斗?」

宙斗 「どっちかが焦って先にいっちゃったら、ふたりともペースを変えればいい」

宙斗 「先を歩いてる方が立ち止まって、後ろにいた方が早歩きすればすぐに追いつく」

宙斗 「同じペースで歩くのが難しければ相手のことを思いやればいいんだ」

あおい 「宙斗……」

宙斗 「それこそ――さっきおまえがキスしてくれたみたいに」

宙斗 「おまえの優しい気持ちはちゃんと俺に伝わってるんだ」

あおい 「宙斗ぉ……もうばかっ」

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