縛血者 【ばくけつしゃ/ブラインド】

40年ほど前、縛血者社会において猛威を振るった、異端とも言える同族殺しが存在した。
名を「三本指(トライフィンガー)」と言い、活動期間はわずか10年余でありながら、残酷な最期を迎えた縛血者の数はおよそ数百人に上るとも言われている。
必ず犯行現場に血濡れの手形を残し、それは中指と薬指を削ぎ落とした三つ指の形状をしている鳥の足を連想させることから、その名がつけられた。

その目的は不明。狙う獲物も無差別。
ただひたすらな継続力と執念で、アジアからヨーロッパ、アメリカに至るまで、世界各地に血塗られた異形の手形を残し続けてきた。
ロシア圏の「鎖輪」に至っては、支配者階級を軒並み殺戮されている。そのため、「鎖輪」は一時期は壊滅状態に陥った。
文字通りの意味で、たった1人で血族社会を揺るがした連続殺人鬼である。

さらに奇異な特徴として、同族を殺害するためにとった手段が、非常に合理的な点が挙げられる。
突発的な闘争が多い通常の縛血者と違い、計画的な犯行で同族の殺害を行っていた。
狡猾にして徹底な殲滅。同族の血を吸うことなど興味なく、ただ血族を根絶せんと動いていたのではないかという論もあるが、真偽はもはや闇の中である。
その外連味なき行動はどこか狩人の側を想起させ、今でも「三本指」が縛血者社会での忌み名とされている要因にもなっている。