幸「ナーラ、かゆいところはない?」
ナーラ「うん……大丈夫」
やちる「それ、美容院でも聞かれるけど結構言いづらいのよね。正直にかゆいって言うと不潔っぽいイメージに見られそうで」
幸「うふふ、そうね。本当にかゆい時は、こっそり頭の位置を自分で動かしたりして」
加護「あ、やっぱりみんなそれやってたんだ。なんか安心。自分、多数派に属してるって感じがして」
加護「で。それはそうと、みなさん……せっかく女子会的に全員集まってるんだし、この機会にそれっぽいトークをしたいと思いませんかね」
やちる「それっぽいって何?」
加護「そりゃもちろん、男の話に決まってるじゃないですか」
一瞬、微妙な沈黙が空気に流れたのは何ゆえだったのか。無意識の内に、ナーラを除く三者の視線が一秒足らずの間に交錯する。
観察、欺瞞、牽制――そこで織り成されるのは高密度の情報戦だ。対象への自他の感情の認識、そして自己の立ち位置の決定。湯煙の団欒は、一瞬にして女の戦場と化す。
そして、このグループにおける対象――すなわち、男の存在とは。