すると、ナーラの姿はすぐに見つかった。
声をかけようとした俺は、だがその様子に日常とは異なる何かを感じて沈黙する。 一週間ほど前、この避難所に辿り着いた夜のことを思い出したからだ。
あの時も、ナーラは今のような無心さで星空を見上げていたような気がする。 心がを地上を離れているような神秘さを漂わせた佇まいは、どこか小さな女神のようだ。
そしてあの時、このような状態のナーラに俺たちは導かれるようにして奇跡的にここへ辿り着けた。 あの時と今のナーラは同じような状態に見える。
直「ナーラ……どうした?」
ナーラ「ナオ……“敵”が来るよ。 たくさん、ここへ殺しに来るよ」
琥珀の瞳が見つめる先。 小学校の塀を超えた彼方には、かつて都市だった瓦礫の荒野がただ広がっているだけだ。
そこには青灰色の闇しか見えはしない。 だが俺の肉体に息づく異形の怪物因子が、疼くようなの反応を訴えはじめていた。
俺は視覚の代わりに、その感覚で闇の彼方を視た。
そこには――