新西暦1027年、軍事帝国アドラーの帝都を襲った未曾有の災禍のこと。
マルス、ウラヌスという謎の生体兵器が突如として帝都に襲来。その一角を丸ごと焼き払い、軍人民間問わず総計約七万三千人という多すぎる死者を生み出した帝国史に類を見ない悲劇である。
当時大佐階級だったヴァルゼライドはこれを終息させたことで英雄となり、総統にまで上り詰めた。
事態を収束すべく戦う彼の雄姿は、当時幼かったアッシュの記憶へ今も強く焼きついている。
二体の異形が星辰体を用いていたこと、そしてそれが帝国以外で恐らく製造されたことから、黄道にいながら十二星座に含まれない蛇遣い座の名で語り継がれることに。
八年経った新西暦1035年でも未だ多くの謎に包まれている事件であり、二体の異形はカンタベリー聖教皇国の刺客であるという論が帝国内では主流だが……それを裏付ける確かな証拠は何一つ存在していない。