エリー 「ヴィルヘルム・エーレンブルグ……1917年、7月10日にドイツ、ハノーヴァーで生まれる」

エリー 「27年9月、父親を焼殺し、母親であり姉であるヘルガ・エーレンブルグを強姦殺人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
     少年院に送致されるも、同年12月に脱獄」

エリー 「その後も強盗、強姦、放火、殺人を繰り返すが、41年に後のSS特別連隊、ディルレワンガーの一員となり、
     翌年2月のパルチザン掃討戦で戦果あげる。これによって罪は免責」

エリー 「しかし、44年のワルシャワ蜂起戦において、市民、敵兵、同胞を問わず虐殺。
     街路の端から端まで、串刺しにして晒す。公的には、それで粛清されたとなっているが……」

エリー 「45年のベルリン市街戦時に、目撃情報あり。その他、70年のベトナム、82年のアフガン、
     85年のイラク等、各地の戦場でその存在を確認されており、もっとも新しいのが91年の湾岸戦争GULF WAR
    砂漠の剣作戦Operetion Desert Saberにおいてである」

エリー 「――とまあ、ありがちだけど、いわゆる戦場のオカルトだね」

エリー 「なんでもこいつ、兵隊世界じゃ伝説になってるみたいよ。
     曰く、白い貌のSSを見たらとにかく逃げろ――何があっても戦ってはいけない」

エリー 「どう、少しは参考になったかな?」

モニターを見ながら、気だるげな感じで本城が訊いてくる。俺は正直、胸糞が悪くなっていた。

エリー 「まだ詳しく知りたいなら、翻訳かけてプリントアウトしてあげるよ。たとえばルサルカ・シュヴェーゲリン、
     こいつなんか傑作で……」

蓮 「いや、もういい」

連中の経歴なんかを聞いたところで、内臓が腐りそうになる不快感しか覚えない。
情報が大事なのは理解してるが、それも種類によりけりだ。

蓮 「一人ずつピックアップしなくていいから、
  分かってる範囲のメンバー構成を教えてくれよ。
   顔写真があるなら、それだけでもいい」

エリー 「そう? じゃあざっといくけど、ヴィルヘルム
     ・エーレンブルグ、ルサルカ・シュヴェーゲリ
     ン、 ヴァレリア・トリファ、ロート・シュピーネ」

エリー 「それからベアトリス・キルヒアイゼン……はもう死んでるみたいで、その抜け番が櫻井螢。
     こいつらが高額の賞金首だってことはOK?」

蓮 「……ああ」

本城が言うには、どうもそういうことらしい。奴らは、その首に法外な懸賞金が掛かっている。
それについてさもありなんと思う反面、やはり嫌な気になった。
理由はどうあれ、相手が何であれ、殺人を金で煽ろうという考えが気に入らない。
ネットにこういう所があるのは知っていたが、直に見るのは初めてだ。

蓮 「それ、どこのアングラサイトだよ」

うんざりしながら、俺が訊くと、

エリー 「国連」

蓮 「は?」

エリー 「だから、国際連合。WW2の戦勝国様。地球大統領府とか、馬鹿っぽい言い方をしてもいい」

エリー 「そこの人らにとっちゃあ、意地で抹殺しておきたい亡霊なんだよ、こいつらは。
     勝者の歴史ってやつがあるだろうし」

エリー 「だから当然、この情報だって簡単に閲覧できるものじゃない。
     コネと、金と、その他色々、裏技使わないと観れないよ。一般人じゃあ、まず無理だね」

蓮 「……おまえ一般人じゃないのかよ」

エリー 「実はただの一般人じゃなかったり」

咥えタバコで、シニカルに笑う本城。
こいつがそっち系に強いというのは聞いていたが、どうやら相当ぶっとんだスキルを持ってるらしい。国連のデータベースにハッキング紛いの真似をかけるなんて、そこらのパソコンマニアにできる芸当じゃないだろう。
まったく、類は友を呼ぶと言うべきなのか。あの司狼バカ、本当にろくな知り合いを持ってないな。